終末の夜にはしないこと

書きたいと思ったことを好きに書きます。

あなたには見えない光〜モーニング娘。'15鞘師里保卒業に寄せて〜

モーニング娘。'15の鞘師が、卒業する。

ハロオタ及び、モーニング娘。の現在を少しでも知ってる人なら恐らく驚愕したこと。

長らくエースを務め、不動のセンターとも思われた17歳の少女。そして、アイドル界のトップクラスのスキルと圧倒的なオーラを持つ鞘師。 彼女がモーニング娘。からいなくなる。

9期メンバーとしておよそ5年前加入した彼女の卒業は、9期初の卒業となる。彼女より年上の同期がいる中で、エースが最初に卒業するのだ。 年長の譜久村聖でも、進路を決める生田衣梨奈でも、バラエティーで顔の売れ始めた鈴木香音でもなく、デビュー当時からずっとセンターを背負い続けた鞘師の卒業。私にとっては予期せぬものだったし、それでも納得のいくものだった。

12歳の時からセンターに立ち、パフォーマンスを率いてきた彼女の5年間。それは計り知れないたくさんの感情に満ちていただろう。と思う。 そして早くに彼女を成熟させたのはモーニング娘。だ。そして、17歳にして未来を見据えた目をした彼女が、ステージに立っている。

ホールツアー最終日、武道館

実は、この前までの文章は、鞘師の卒業発表直後に書いたものだ。そこから先、書き進められなくなった。たぶん、札幌のツアーを見終わって、ブログでの発表があって、それから一度もリアルタイムでコンサートを見ていなかったから、実感がわかなかった。いや、実感はわいていたしたくさん彼女に思いを馳せた。しかし、なんだか上滑りするような心地だった。
12月8日、モーニング娘。'15秋ツアーファイナル武道館。ライブビューイングに行くことができ、ようやく彼女について書けるようになった気がする。しかし、今回の武道館に触れることになる。
ということで、ネタバレ有りなので、ここから先はご注意を。

オープニングアクトハロプロ研修生(推しは井上ひかるん)、こぶしファクトリー(推しは小川麗奈)にほくほくし、テンションが上がったところで、オープニングVTRとソロダンス。それぞれのダンスがかっこよくて、これはライビュでよかったなと思わせてくれた。いやほんとに。札幌のコンサートの時は、遠目でしか見えなかったから。
このまま全てのセトリに触れたいのだけれど、レポではなく鞘師についての雑感を書きたいので割愛し、この記事では、印象的だった曲についてのみ触れることとする。

メンバー紹介VTR

まず最初から曲じゃないのだけれど。このメンバー紹介VTR、見た人はわかるし、見ていない人は映像化を楽しみにしていてほしいのだが、全員が全員美しい。全員が意志の強い瞳で、まばゆい。なんというか、これだけで泣きそうになる。ああ、この子たちを好きでよかった、と思える映像になっているので是非見てほしい。

冷たい風と片思い

初見の新曲。つんく氏のライナーノーツによると、当初は鞘師のソロ曲になる予定だった。最終的に全員曲となったわけだが、折衷案なのかフォーメーションダンスにもかかわらず終始鞘師がセンターを張り、踊り狂う。その姿を見ていると、やはりこの子はずっと踊り続けていてほしいし、スポットライトを浴びていてほしいと切に願わざるを得ない。圧倒的な気迫を持って踊り狂う様は、彼女がいなくなったあとのことを想像できなくさせる。残酷なまでにかっこよかった。

大阪恋の歌~アイサレタイノニ…~友

真っ赤な真っ赤なドレスで歌う鞘師。さすが、というかダンスもしっかり踊る。そんな「大阪恋の歌」が鞘師の今回のソロ曲である。太い声が、関西弁によく合い、かっこよく武道館に響き渡った。ちょっとだけもちっとしたビジュアルの鞘師(愛故にそう言わせていただきますが)が、ここぞとばかりにパフォーマンスする姿はやはり伊達にエースじゃないなと思わせる。赤ちゃんみたいな顔をしながら、かっこいい、そしてかわいい。なんて「モーニング娘。らしい」ギャップでしょう。鞘師が娘。でよかった。
そして、間髪入れずに始まるアイサレタイノニ…。全員がドレス姿で現れ、ダンスフロアに愛情を込めたパフォーマンスをする。当時の音源を思い出してグッとくるものがある。鞘師はやはりあの頃と同じように曲の中核を担う声として堂々たるものだが、他のメンバーの成長も目覚ましい。即戦力として加入した鞘師を追うように成長した9期の姿が、語らずともこの曲を通じて感じられた。
最後に、友。これは10期以下のメンバーで歌われた。そして、まさかのここで、佐藤優樹の涙目。ずるいよ…まーちゃん…。

遠く離れた僕たちにだって 心配いらない できることがある 愛しているんだ ずっと仲間だろ 

そう歌う佐藤優樹の目に涙が浮かび、もらい泣きをしそうになる10期、そして後輩たち。歌詞に自分たちを重ねていたのであろう。鞘師里保を追いかけてきた佐藤優樹の心中はいかばかりか。きっと彼女は'16の中心となる。どうなる、モーニング娘。

アンコール明けMC

案の定、鞘師へのメッセージを含むメンバー全員によるMC。泣きだすメンバー、涙ぐむだけにとどまるメンバー、気丈にふるまうメンバー。それぞれだったけれど、鞘師はそのどれもを包み込むような笑顔で、時には暴露に慌てふためいて、あくまでいつもの鞘師だった。佐藤優樹モーニング娘。を進化させ「やっさん*1を後悔させる」という旨の話をしたときは、泣き出しそうなというよりも、まぶしそうな顔でうなずいていたのが非常に印象的だった。

ENDLESS SKY

新曲。「自分で決めたことなんだから泣くはずがないのに泣いてしまう、悔しい」みたいな歌詞があるのだけれど、そこで鞘師は涙を一筋流した。MCの間ずっと泣くことなく、ああ今日は泣かないんだなと思わせて、この涙である。つんくがどこまでも彼女のことを想って書いたのではないか、そう思わせる楽曲だ。彼女に寄り添った曲を作ってくれたんだろうと思う。はなむけにふさわしい曲だ。

ここにいるぜぇ!

名曲である。テンポも速く難しい曲を、いとも簡単に「今の」モーニング娘。が歌いこなす姿は、今までの歴史を知れば知るほどグッとくるのではないか。楽しそうに歌って武道館のステージを端から端まで余すことなく走り回る少女たちの、一瞬のきらめきを感じると胸に来るものがある。カメラにアピールしたりぴょんぴょん飛び跳ねたり。変顔をしたり、肩を組んだり、顔を寄せ合ったり。
いつまでもこのメンバーでいてほしいと思うのに、もう来年の1月1日、鞘師里保は、いない。

あなたには見えない光

武道館公演を終え、楽しかった気持ちと切なさと、色んな思いを抱えて劇場を出た。涙ぐむファンたちを見ながら、何とも言えない気持ちだった。鞘師がいなくなることを惜しむ気持ちと、いつかダンサーとして大成して成功してほしい、夢を叶えてほしいという気持ち。でも、結局帰結するところには、メンバー全員が幸せになってほしいという想いがあるのだなと感じている。
'16になった暁には、鞘師里保はいない。しかし、残された12人は、違う場所で一緒に頑張っているのだ。どんな形になるか、誰も知らない。誰がセンターになるのか、歌割はどうなるのか、誰も知らないけれど、きっとモーニング娘。は私を裏切らない。
それは、12期が増えた歌割を嬉しそうにこなす姿を、小田さくらが高らかに歌い上げている姿を、工藤遥がかっこよくソロパートを決める姿を、佐藤優樹の未来を見据えた瞳を、石田亜佑美の強がって涙をこらえる姿を、飯窪春菜の上達した歌を、鈴木香音の笑顔を、生田衣梨奈の柔らかく自然になった表情を、そして譜久村聖の堂々と覚悟を決めた顔を見て強くそう信じられた。この子たちの努力は裏切らないし、それは私たちファンのことも裏切らない。信じていいのだ、きっと。
それにまだ、最後ではない。あと23日ある。20日でも21日でもない。
かつて道重さゆみは言った。いつだって今のモーニング娘。が最高だと。
その通り、10人のモーニング娘。は究極の愛の形だと思っていたし、13人のモーニング娘。は最高だ。失いたくない。でもきっと、12人のモーニング娘。だって、今後誰かが加入しても卒業してもいつだって最高なのだ。今日を生きて明日に繋ぐのだ。

鞘師が今日見つめていたのは、赤く眩しく照らされた武道館だ。でも彼女は知らない。知らなくてもいい。でも、全国、そして海外の映画館で見つめていたファンも、赤い光を灯していた。本当にたくさんの人が、彼女を惜しみ、称え、想いを馳せていた。きっと、見られなかった人もたくさんいたけれど、あなたに想いを馳せていた。これから先、卒業した後にあなたの魅力に気づく鈍感な人もいるだろう。そんなあなたには見えないたくさんの光が、あなたを照らしていく。願わくば、それが重圧となりませんように。ただ、あなたを支えるためでありますように。
鞘師、卒業おめでとう。あともう少し、見届けさせてください。そして、それから先も。

*1:彼女の使う鞘師里保の愛称